難関物理 PART1/PART2
講座情報
- 講座コード:1868(PART1)・1874(PART2)
- 担当講師:三宅先生
- 収録年度:2016年度
- 授業回数:90分*40回(PART1・PART2各20回)
- 確認テスト:40回(PART1・PART2各20回)
- 講座修了判定テスト:2回(PART1・PART2各1回)
- レベル:6~8
- キャッチコピー:付け焼刃な思いつき解法を捨て、あるべき理論を身に纏おう
- 対象学年:高3・高卒生
- 講座の対象:早慶上理、難関国立を目指し、物理の理論に深い理解を求める生徒
- 講座の目標:早慶上理、難関国立合格に必要な物理モデルを厳密に理解する
- 学習項目:<PART1:20講>=<力学13講>+<熱力学4講>+<力学的波動3講> <PART2:20講>=<幾何光学4講>+<電磁気学13講>+<原子物理3講>
- 学習内容:物理の理論体系の源泉である「原理」は経験則であり、決して何からも証明されません。天才たちのひらめきの結晶であるそれは宝石のように美しい。しかし、物理の学習においては、それを見出すことが求められているのではありません。原理から生ずる理論体系を葉青くし、それを行使できることが求められているのです。したがって何のセンスも思いつきも要りません。必要なのは「解らない、解らない」と悩み続けながらも手に入れようとする努力とプライド。これだけは持ってきて下さい。余計な物理公式、知識なんて要りません。本講座では原理に重きを置き、理論解説に多くを費やします。付け焼刃な近道など与えません。あるがままの物理をあるがままにお伝えします。私からは可能な限り情報量を詰め込んで投げ掛けますが。これを不断の努力をもって受け取り、志望大学合格へのキャッチボールとできるかどうかは貴方達次第です。
- 受講上の注意:未記載
- 必須講習講座:なし
- 事前受講講座例:未記載
- 予習の仕方:未記載
- 復習の仕方:未記載
- 講座の構成:
- PART1
講数 内容 第1講-1 自然科学の起源 第1講-2 拘束力と拘束条件 第2講-1 種々の力 第2講-2 並進運動と回転運動 第3講-1 エネルギーと仕事 第3講-2 力学的エネルギー 第4講-1 運動量と力積 第4講-2 系の重心と保存則 第5講-1 円運動の拘束条件 第5講-2 円運動と遠心力 第6講-1 単振動の方程式 第6講-2 種々の単振動 第7講-1 天体の運動 第7講-2 熱力学序論 第8講-1 モル比熱と諸法則 第8講-2 気体分子運動論 第9講-1 熱機関 第9講-2 正弦進行波 第10講-1 力学的波動 第10講-2 ドップラー効果 - PART2
講数 内容 第1講-1 屈折と反射 第1講-2 2つの原理 第2講-1 分散 第2講-2 干渉 第3講-1 電場と電位 第3講-2 コンデンサ 第4講-1 誘電分極 第4講-2 抵抗 第5講-1 直流回路 第5講-2 磁場 第6講-1 電磁誘導 第6講-2 導体棒の電磁誘導 第7講-1 コイル 第7講-2 誘導電場 第8講-1 相互誘導と電気振動 第8講-2 交流回路 第9講-1 発展的総合問題 第9講-2 光の粒子性 第10講-1 電子の波動性 第10講-2 核反応と質量欠損
- PART1
この講座について
旧帝大,早慶などの難関大志望向けの講座。全40コマとハイレベル物理などと比べ少ないが,テキストはとても分厚い(2冊で約700ページ)。高校範囲を当たり前のように超えて行き鬼のように速く,非常に難しいが師の解説は非常に分かりやすいので丁寧に受講すれば旧帝大で物理をぶっちぎる実力がつく。パンフレットでは6~8となっているが8~9くらいだと思った方が良い(2023年から7~10に改訂される模様)。ハイレベル物理はちょっと...と思って安易に取るととんでもないことになるので注意。
講座としては力学13講・熱力学4講・波動分野7講・電磁気学12講・物理総合1講・原子3講で構成されている。
「参考書を真面目にやった方がいいのではないか,テキストに全て書き込んでくれた方が分かりやすい」と思う事もあると思われるが,この講座は全くそんな事は無い。『映像だからこそ,師の声だからこその圧倒的な分かりやすさ』がある。師の少しの早口(理解しやすい早さ)で語られる「物理の世界で見受けられる根本的な事象」の説明を全て文字に起こしたらとても読もうと思える量ではないだろう。物理の事象だけでなく計算過程においてもこう計算した方が良い理由を説明してくださり,解答を非常に丁寧に作成して下さる。第1講を(丁寧に)受けただけで物理が大好きになるだろう。
授業で扱う問題(Invitation Card)に関しては旧帝のやや難~難程度の問題を扱う。過去問や師がオリジナルで作成した問題などとそのバリエーションは様々であり,師が講義内で度々仰る難関に相応しい題材となっている。またほぼ全ての問題に誘導がなく,いかに物理が見えているかが試される出題となっている。講義はとても分かりやすく,好奇心を刺激するような授業を展開なさる。
テキストは1講当り,はじめに理論・概念解説,演習問題2~3題(Invitation Cardと銘打つ,師曰く物理という学問からの招待状と思って欲しいとの事),別解・追加問題・補足(solution),復習用練習問題(Exercise)で構成されている。
講義で扱うのは理論・概念解説とInvitation Card。
Invitation Cardの問題は解く過程や解いた後に,実際にその講の分野の理論がどのようにして実用化されているのかが分かるような作問がされており,これがまた非常に面白い。また,問題中に数値が少なく殆ど文字式のままで出題されている。
solution(別解)の解説がすこぶる丁寧。また,講義で解説する解答はどちらかといえば発想力等を要する物が多く,solutionの回答の方が入試における一般的な解き方となっている事もあるので,そちらの方の確認・復習も疎かにしてはいけない。
テキストの巻頭に数学的準備の項があるが,いちいち予習する必要は無い。講義中に関連する話が出てきた時に「テキストの始めの方に書いておいたから~」と教えてくださるし,正直理解できなくてもそこまで困らない。
また,巻末には発展的事項と称して高校物理では扱わない(が,よく勉強している人は疑問に思うであろう)事柄を解説してくれている。
Part2のテキストの発展的事項には相対性理論についての項もある。師曰く,そこは特に高校生にも出来るだけ理解しやすいように,めちゃくちゃ頭を使って解説を考えたとの事。
テキストの内容と講義内容は,内容の話す順序が違ってたりテキストでは公式の導出方法は書かれていなかったりと少し違うところがあるので,当然の事だが板書ノートを別にとるべき。
公式の導出においては微積分を用いることも多々あるため,数Ⅲの理解は必須(かなり高級な数学もたまに使うので微積もぐんぐん[理系微積分+α]-基本編-、数学の真髄-基本原理追究編-理系を受講してからこの講座を受講するのがオススメ)
この講座を取る前に何か講座を挟む必要は無い。(数Ⅲ微積分が苦手でない限り)初学でも大丈夫だろう。
基本的にテンションが高い。
講義内で何回もアイザック・ニュートンとフルネームで呼ぶ。その他にも多くの往年の科学者の名前が雑談に出てくる。
物理用語を英語でいい発音で言う。
物理でよく「見える」と言うが師は「感じる」という。
板書がとても見やすい。しかし板書スピードも速いため慣れるまで等倍速で受けた方がいい。
三宅先生の講師ページにもあるように先生の講義スタイルは駿台の伝統的な微積物理に似ており,また駿台の物理講師である山本義隆師を崇拝しておられる。この事から,あくまでも個人の意見ではあるがこの講座を受ける際は山本義隆師の著書『新・物理入門』を併用して受講する事で更なる理解を目指せると考えられる。
最後に、本講座テキストのはじめにを引用する。
物理学はアートです。発端となる力学は英語で mechanics。物理学は自然現象をメカニカルな視点で数式として人工的に再現する手段です。自然現象そのものにはなり得ません。物理学は自然現象の模型に過ぎないのです。物理体系は,原理とよばれる最も基礎的で大切な法則に根づき,理論の枝葉を広げていきます。理論の発生源たる原理それ自体は、決して他の法則から導かれることはありません。原理の確からしさを示してくれるのは,自然現象の再現性(多くの自然現象をよく説明しているか)のみです。あくまで示すのは「確からしさ」であり「確かである(正しい)こと」ではありません。つまり,観測の精度が向上すれば,その原理が及ばない自然現象が見つかる可能性を常にはらんでいます。これを科学の反証可能性といいます。反証可能性がある限り科学は完全ではありませんし,残念なことに反証可能性がないものは科学ではありません。従って,悲しいことですが,人間の理論とその記述形式である数式は不完全ですし,これから完全となる可能性もありません。物理学は真理探究の学問ではありますが,永遠に真理には到達できないことが知られているのです。これを私は哀愁を込めて「真理の漸近線」と呼んでいます。
物理学はどこまでいっても人工物ですが,自然が美しいのと同様に,カンバスに描かれた精密な模写にも美しさがあります。だから物理学に美しさを感じるのは決しておかしいことではありません。自然の美しさを誰よりも強く感じ,ひたむきに写しとる技術を構築してきた科学者達の夢の軌跡。高校物理はまだ序章に過ぎませんが,その情熱の物語を一緒に迫ってみませんか。
紙とペンさえあれば自然現象を再現できる。その技術が人類の未来を形創る力であることは間違いありません。著書「2001年宇宙の旅」で有名なSF作家,アーサー・C・クラークは「過度な科学技術は魔法と区別がつかない」と言いました。100年前を生きた人たちにとって,今の私達が慣れ親しんでいるテクノロジーは確かに魔法です。 これからも料学はたくさんの魔法を見せてくれることでしょう。
〜「難関物理 PART1 はじめに」より
人類史上最高の頭脳アイザック・ニュートンも,万能多才のロバート・フックも,閃きと実験の奇才マイケル・ファラデーも,数式による体系化から未来を予言したジェームズ・クラーク・マクスウェルも,時代が追い付くことを許さなかった不遇の先駆者ニコラ・テスラも,孤高の賢人長岡半太郎も,二十世紀最大の天才アルベルト・アインシュタインも,饒舌な秀才リチャード・フィリップス・ファインマンも,みーんなおんなじ人間です.私も学生時代,物理を学んでいてこれらの本物の天才たちに出会い「彼らは本当に同じ血の通った人間なのだろうか」と衝撃を受けるとともに,自分の無能さに失意することも多々ありました.しかし,確かに彼らは人間に違いありません.なぜなら彼らによって作られた物理学がとても人間らしい学問だからです.
現象あるところに因果あり.事が起こったなら必ず何らかの理由があるはず,と思うのが人間です.そんな自然現象の因果関係を掴むトレーニングとして高校物理があります.「理想的に」とか「無視できるものとする」という言葉をよく目にするでしょう.ここには物理の考え方が詰まっています.眼前の現象は多種多様で複雑な因果の絡み合いが形成しています.これをそのまま理解しようとしても不可能です.まずは現象を力学や電磁気学などのスペクトル(成分)に分けて,理想化された最小要素を抽出し,各スペクトルの支配法則で記述した後,それらの組み合わせとして元の現象に復元していくのです.高校物理ではその理想化された最小要素を記述,解析する手法を学習します.これは貴方たちが将来,眼前の複雑な現象に怯むことなく立ち向かうための準備なのです.どっかの経営者が言ってた言葉を思い出しました.「賢者は複雑な問題を簡単にし,愚者は簡単な問題を複雑にする.」なるほどねぇ.
さあ,難関物理 part 1 を乗り越えた学生諸氏,高校物理もあと半分です.どうも物理に自信が持てない諸氏は,毎日,お風呂で「私は天才,私は天才…」と言い聞かせ続けましょう.自信こそあらゆる行動の原動力です.生まれ持ったものなんて所詮人間同士,誤差の範囲です.自分を天才に作り上げてしまえばいいんですよ.負けず嫌いで,見栄っ張りで,自信家なぐらいが学問やるにはちょうどいいんじゃないでしょうか.では参りましょうか.難関物理 part2 の始まりです.
〜「難関物理 PART2 はじめに」より